「多いときは週に2~3回は記者と飲んでましたね」。

 

こう話すのは、2年間、親会社の広報部に籍を置き、昨年、出向から戻ってきたO氏。現在は、グループ会社で広報マネージャーの任にある。まさに“飲ミニュケーション”によるメディアリレーションといったところである。

最近は少ないが、記者と酒を飲むのが広報の仕事として暗に認められていた時代もあった。

 

「記者と良好な関係をつくろうと思えば、大企業の広報担当者は、大なり小なり、日常的に記者との酒席の機会をつくっている。決して悪いことだとは思っていない。個人的に親しくなった記者も何人かいますね」と、あっけらかんとしている。

 

酒を交わす目的の一番は記者と親しくなるためだ。具体的に仕事の話しをすることはなかったという。確かに、酒の席で仕事の話しばかりすると、マイナスの印象を与えかねない。

 

酒席の必要性は、当時の広報部長のことばからも窺い知れる。O氏にこう話したそうだ。

「対外的な広報活動は、営業活動と同じだ」。

 

つまり、メディアリレーションは営業行為ということだ。本人はどう受け止めたのか。

 

「出向に行く前はグループ会社で営業を担当していた。プレスリリースの配信だけが広報の仕事ではない。毎日、足繁く通うわけではないが、メディアに自社のサービスや製品を売り込むのは確かに、営業活動ですね」。

 

接触するメディアはどういったところだったのか。

「新聞、テレビそれとビジネス系メディアなど、経済記者が中心でした」。

 

2年間、密にメディアリレーションを築いてきたO氏には、いまの会社の広報活動が稚拙に感じられるようだ。

「記者の携帯電話に連絡して、この件は書けますかね、程度のことが言える関係をつくらないと、広報パーソンとは言えない」と手厳しい。

 

現在は、以前のように記者と酒を酌み交わすことが、めっきり少なくなったという。

その顔はどこか、物足りないようにも映った。