「広報部への異動がおりたときは、すごく嬉しかった」。

 

こう語るのは、この4月に広報部長に就任したY女史である。

 

中途採用から10年。一貫して事業部でのマーケティング畑に身を置いてきた彼女がなぜ、広報部への異動を喜んで受け入れたのか。

 

「人にモノを勧めて理解してもらう、という行為が好きなんです。自画自賛ではないですが、当社は良い製品を数多くもっています。NDA(秘密保持契約)の関係であまり公表できませんが、優れた技術もいっぱいあります。それらを、世の中へ知らしめるつまり、プロモーションできる立場になれたのが、最高です」と、天職を手にしたような口ぶりである。

 

BtoB向けの製品を扱う同社は、業界では実績・知名度もあり、それなりの評価がある。いっぽう業界外に目を向けると、まだまだ認知度は低い。一般の人はもちろん、個人投資家や新聞、雑誌、テレビといったメディアにも知られていない。そんな彼女に、自社の広報活動はどう映っていたのか。

 

「これまで広報の仕事を見ていて、何をやっているのか、というのが正直な印象でした。プレスリリースを配信するぐらいしか記憶がないです」と。

 

では、これからどう広報に取り組んでいくのか。

 

「まずはメディアリレーションの構築です。記者の関心・興味のあるテーマやニュースなどを調べ、メディアに適した情報を提供して、記者との関係づくりから手をつけていきます。一般の人たちに当社が何をしている会社なのかを知ってもらうために、小学生を対象にしたイベントを行うなど、これまでやっていないことにチャレンジします」。

 

この他にも、新製品の記者発表会さらに社長インタビューなど、決して派手さはないが、地に足のついた広報活動をすすめていきたいと抱負を語っている。

 

彼女を広報部長に任命した社長は自社の広報をどうみているのか。

 

「トップはIRへの認識・理解は高いですが、広報についてはまだまだですね。Facebookの立ち上げを打診したのですが、遊びだろう、の一言で一蹴されましたから」。

 

しかし、Y女史はいたって前向きである。実績を積んで、社長に広報の重要性を説いていくと、元気がいい。

 

「うち(会社)の広報かわったよね、と言われたい。そのためにも開かれた広報にしたいです。やりたいこと、やれることは山ほどあるので、前に進むのみです」。

 

広報部とはいえ、彼女と部下の二人だけである。

 

一年後、彼女と会社がどうかわっているのか、楽しみである。