「Webメディアはいつでも直しができる、と思われている。癪だな、と感じるときがある」。

こう語るのは、紙とWebの両メディアに10年ずつ携わってきたT副編集長である。

 

なぜか。

「先日も、企業の取材をし、記事をWebに掲載した。数日後、広報担当者から電話がはいり、

修正のお願いがあった。社内で合意のとれていない情報を提供し、それが記事に掲載されてしまったので、削除してほしいとの要望でした。結局、広報担当者がわざわざ編集部を訪れ、頭を下げての謝罪、懇願となった」。

 

明らかに、非は企業側にある。しかし、間違いは間違いである。だが、T氏は腑に落ちない。

 

「Webメディア側の問題なのかもしれないが、はい、はい、と二つ返事で修正しまうのは、メディアとしての一貫性という意味ではどうなのか。誤った情報を載せるつもりはないが、なぜミスをしたのか、そのプロセスの検証がごっそり抜け落ちている」と、安易に修正を受け入れることに疑問を投げかける。

 

確かにこのケースは、T氏側に落ち度がないにも関わらず、原因が検証されず、理由が読者にも公開されず、記事だけが修正された。T氏としては当然、納得がいかない。

 

半ば呆れ顔で、別のケースを話す。

「あの記事はなかったことにしてほしい。そういって、記事の取り下げを打診してきた会社があった。訳を尋ねると、発表した製品の出荷が間に合わない、というものだった」と。さらに問いただしたところ、社内で出荷日の合意が取れていないまま、こちらのミスで、情報を開示してしまった、との説明であった。

 

紙のメディアでは、こうはいかない。

「紙のメディアで訂正となると、大騒ぎです」。

「Webメディアは、紙メディアより格下に見られている気がする。紙があって、その下にWebと」。

悲観的なT氏である。

 

T氏の気持ちがわかる記者や編集者は、他にもいるのだろうか。

 

広報担当者はどう、この問いかけを受け止めるか。

 

あるいは‘簡単に修正できて、便利になった’という程度の話しか。

 

難題である。