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新聞社と通信社って、どんな関係なんだろう

新聞社と通信社。

ニュースを買う側とニュースを売る側。

それ以外のことはあまり知られていない。

 

20年以上のキャリアをもつ新聞記者のA氏は、新聞社と通信社(仮にG社としておく)のことをこう話す。

「1年契約で毎年更新します。政治、経済、国際、社会、スポーツなどの一般ニュースが、通信社から新聞社に配信されてくる。文化面に使うような旅の企画などはオプション契約なので別途、費用が発生します」。

 

契約料金はどうなっているのか興味が沸く。

「契約料金は、新聞社の新聞の発行部数と新聞1部の価格をベースに、G社が算出します。

部数が多いほど契約料は高くなる仕組みです」と、A氏は説明する。

 

ニュースは専用回線を通じて送られてくる。朝に配信が始まり、深夜の1時から2時くらいまで提供される。相当の数にのぼるが、A氏が籍を置く新聞社では半分も使わないという。地方紙なので、地元の記事は自社の記者が書いたものが当然、掲載される。通信社からのニュースで主に利用するのは国政、国際など、地方紙ではカバーできないもが中心となる。1年間で相当の額の契約料を通信社に支払っている。半分しか使わないのは経費の無駄ではないか。

一般企業では考えられない気がする。紙面の量に限りがある一方で、一定の分量がパッケージで配信されるので、やむを得ない面もあるようだ。ニュースを厳選する手腕が問われる。

 

送られてくるニュースはトップクラスのものと、それ以外の2種類。

「トップクラスのものは『一押し』を意味します。新聞の一面あるいは、社会面のトップにもってくるような大きな記事です。地方には、通信社の記事で多くの紙面を作っている新聞社もあるほどです」。

通信社の存在の大きさがわかる。

 

新聞とくに地方紙にとって重要な通信社だが、人的な接点はあるのだろうか。

「通信社の各編集部門の部門長と、地方紙の部門長による定例の会議があります。政治部や社会部など、部門別に集まり、情報交換をしています」。

 

どんなやりとりがなされているのか。

「日々の編集現場に関する仕事の話が中心です」。

社会部であれば、このような事件があり、匿名か実名のどちらを掲載すべきか、他社はどう対応したかなど、といったものだ。

 

こういった会議の中で、注目すべき会議があるという。整理部長が集まる会議だそうだ。全国の新聞社の整理部長が一堂に会するもので、G社側は新聞社にニュースを配信する部門長はもちろん、編集局長をはじめ、政治部、経済部など各部門の長が出席する。新聞社の整理部は、G社のニュースの受け入れ窓口となり、送られてきたニュースの採用を決定する。この整理部長が集まる会議はかなりシビアなやりとりがあるという。

A氏曰く「人間社会のありとあらゆる苦情が噴出する。少しでも良い新聞をつくりたいという熱意の故だが」。

 

どんな言葉が発せられるのか。

こんな感じである。

 

「記事が遅い」

「記事がつまらない」

「訂正をだしすぎる」

「写真がない」

「この記事はC社の配信記事のほうがよかった」

「御社の記事は何を言いたいのか、わからなかった」

「A新聞の記事は適確だった」

「このスポーツの写真はまったく迫力がなかった。位置取りが最悪である」

 

ときに、重箱の隅をつつくような些細なことまで指摘されるそうだ。

この整理部長の会議に集まる会に出席したG社の幹部が、ある席でA氏にこぼしたそうだ。

 

「あの会議だけはつらい。竹槍でこずかれているようで、落ち込んでしまう」。

 

新聞社も通信社もジャーナリズムの第一線という印象があるやもしれないが、なんともいえない生々しい世界があるものだ。

 

「新聞社とくに地方紙は通信社を頼りにしています。確かに厳しい言葉もあるが、頑張ってほしいという激励でもあるんです」とはA氏の弁である。

地方紙は生き残れるのか

「新聞社は斜陽産業だ。地方紙はいつ潰れてもおかしくない」。

 

地方紙で論説委員を務めたU氏は、新聞そして地方紙の現状をこう指摘する。

 

さらに続ける。

「調子のいい新聞はない。全国紙も含め、すべての新聞が発行部数を減らしている。部数が減るということは読者が減る。読者が減れば販売収入も広告収入も減る。その結果、財務状況が悪化し、合理化のために社員を減らす。編集の現場で何が起きているかというと、一人当たりの仕事量が増えている」。

 

斜陽産業化の要因は何か。

 

「やはりネット。情報が無料で手に入り、お金を払ってニュースを手に入れるという習慣がなくなった。これが大きい」と、U氏は嘆く。

 

ここにもネットによる既存の活字メディア離れが浮かび上がってくる。

 

昔は、新聞というと全国紙か地方紙、ということだった。いまは、新聞をとるかとらないかの選択に変わったそうだ。

 

U氏が社の販売担当者から聞いたところによると、新築マンションができても、半分近くは新聞を購読せず、若くなるほど新聞をとらない傾向にあるという。

 

日本新聞協会によると、全国の2010年の一般紙の発行部数は約4490万、2015年は約4069万で、この5年間で400万部以上も減少している。確かに、通勤電車で新聞を読む光景をめっきりみかけなくなった。目にするのは、必死にスマートフォンとにらめっこしている、縮こまった姿ばかりである。

 

新聞社の経営層はこの厳しい現状を、どう見ているのか。

 

「もちろん、生き残りを考えてはいるが“これ”といった策はないのが本音だ。電子新聞にも進出しているがいまだ、採算ベースに乗っていない。主催のイベントも手がけてはいるが、利益は非常に少ない」と、U氏は自社の状況を説明する。

 

新聞社のなかには、不動産事業の収益で、新聞事業のマイナスを補填しているところもあるという。

 

新聞社に生き残る道はあるのか。とりわけ地方紙の多くは厳しいという。

 

「若い人は自分の興味ある情報しかとらないので、いま、世の中で何が起っているのかがわからなくなってしまう。そうすると、何を考えなくてはいけないのかも、わからなくなる。それを伝えるのが新聞の役割ではないか。そういう意味で新聞は必要なメディアである、ということをわかってもらわないといけない。それをどう知らせていくかが鍵になると思う」と、U氏は地方紙の在り方を語っている。

 

新聞だけではない。テレビ、ラジオ、雑誌など、既存メディアはインターネットの誕生で大きな変革を迫られている。

 

Beyond Internet。

 

地方紙はどうなっているのか。

リリースには生活や仕事に役立つ情報を盛り込む。 記者には関心分野を、単刀直入に聞いてしまう

「以前は、一日に5~6本のペースでニュースリリースを記事にしていましたが、いまはほとんど書いていません」と語るのは、IT記者歴10年のH氏である。記者説明会に出席した日には、一日で10本前後の原稿を書き上げるという忙しさだ。

 

何故、ニュースリリースを記事化しなくなったのか。

 

「ニュースリリースを要約して書くのであれば、ニュースリリースの配信サイトには勝てないと思っています。だったら、やらないほうがいい、と感じていました。ニュースリリースを記事にするのはまったく意味がない、とは断言しませんが、やはり直に取材し、聞いてみないとわからないものが多いですね」。

 

企業の広報担当者やPR代理店から、ニュースリリースに関わる電話が入るのも煩わしいと言う。多いときには一週間に40~50件の電話がくるそうだ。確かにうんざりである。

そんなH氏が企業の広報担当者にこうアドバイスする。

 

「メディアを訪問して直接、記者や編集者にブリーフィングしたほうがいい。製品や技術のことを説明したいのもわかるが、ITはあくまで道具なので、社会的な価値や意味合を訴求すべきです」。

 

多くの広報担当者は、配信したニュースリリースが記事化されるとは安易には思っていない。かといって、メディアへの個別訪問はあまりにも時間がかかりすぎる。仕事とはいえ、人によっては億劫に感じる担当者もいる。

 

では、少しでもニュースリリースを魅力的に見せるにはどうすべきか。

 

H氏はこんなアイデアを話す。

 

「新製品や新サービスであれば当然、利用者はまだいないはずです。であれば、実証試験やデータ結果などを示し、社会への貢献度、BtoCであれば日々の暮らしにどう役立つか、BtoBであればいかに日々の仕事に有益か、などを説明すればいい」。

 

この手のニュースリリースもゼロではないが、非常に少ないと指摘する。

 

一方、メディアへの訪問を好意的にみない記者もいる。

 

「広報担当者の気持ちもわかるが、私自身はニューへスリリースを見て、関心があれば問い合せたり取材をするほうです。仮に直接、説明を聞いても、あまり興味がもてないものだと、お互い時間の無駄になる」。

 

でばとうすべきか。

 

「記者に、好みのテーマや関心のある分野を、単刀直入に聞いてしまえばいい。聞き出した情報をベースに、記者の意図にあった素材を社内の関連部署に問い合わせ、それ纏めて、記者に投げかける」。H氏の私見である。

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