中堅・中小企業の広報担当者にプレス対応の業務について聞くと、「プレスリリースの配信」を第一声にする人が多い。プレスリリースの配信は確かに、大事な広報業務の一つである。では他にはどんな施策をしているのか尋ねると、考え込むケースが間間ある。

 

数か月前に、初めてプレスキャラバンを行ったIT企業の広報担当者が、その効果を語っている。

 

「新しいサービスに関するプレスリリースとプレゼン資料を持参して記者を尋ね、新サービスの説明をした。プレスキャラバンをしたことがなかったので、PR代理店に依頼し、プレスリリースの作成、記者への交渉、同行などを依頼しました。産業紙をはじめ、主だったIT系のオンラインメディアに取り上げてもらい、ホームページへのアクセスが2日間で600件、電話の問い合わせも30件近くありました」。

 

社長をはじめ社内での評価も高く、今後も機会があれば、プレスキャラバンをやりたい、と同氏は気をよくしている。記事を広告換算したところ約1000万円近くに達し、プレスキャラバンに費やした金額からして、非常に高い費用対効果になったそうだ。

 

 

プレスリリースは記事化される確率は低い。1日に数百件のプレスリリースが送られてくるので、競争率は非常に高くなる。一方プレスキャラバンは、記者が「ノー」と言わなければ確実にプレスリリースは読まれ、取り上げられる可能性はプレリリースの配信よりはるかに高い。もちろん、100%掲載される保証はないが。ただ手間暇がかかるのが難点といえば難点ではある。

 

プレスキャラバンは時間を必要とするため、記者発表会で対応するケースもあるが、自社の知名度、メディアとのリレーションなどを考慮し、記者の集客力が弱いと判断した際には、他の方法でメディアでの露出を検討したほうがいいだろう。

 

記者発表会を実施して出席が少ないと最悪である。ましてや同日の同じ時間帯に大手の同業社が発表会を行うものなら、記者の出席率はかなり下がってしまう。必然的に記事の掲載はかなり厳しくなる。

 

新しいニュースもなく、トップが話すようなものもない、でも、少しでも自社のことを取り上げてもらいたい、という疑問にはどう応えるか。ある製造業のケースである。

 

「プレスラウンドテーブルというかプレスセミナーというか、記者に情報を提供する機会を設けています。勉強会といっては記者に失礼ですが、当社の事業に関連した市場動向や消費者のトレンドあるいは、製品・技術動向さらに、将来予測などを解説します。講師役はもちろん、社員です」と、広報担当者は得意げに説明する。

 

記事化される度合いは低いが、メディアリレーションを築く一助としておこなっており、出席した記者には喜ばれているそうだ。

 

グローバルカンパニー、大企業ではないので、中堅・中小企業から日々、新しいニュースがでてくるはずがない。

 

広報担当者はニュースのないことを嘆くより、いい意味で情報(ニュース)を創りだす発想に切り替えたほうがよい。新しい発見に出遭えるかもしれない。