2311, 2015

取材対応NGワード! 責任逃れの常套句

25年以上にわたってメディアの世界に身を置いているN記者に、「責任逃れの常套句」といった、メディア対応ではタブーの言葉、NGワードを教えてもらったので、紹介する。

 

まずはこちら。

「知らなかった」「部下がやった」。

社長など取締役以上の人が決して言ってはいけない表現。政治家は「秘書がやった」の一言で逃げてしまう。禁止である。

 

次は「法的に問題はない」「法律は守っている」。

確かにその通りでも「あなたの会社で起きてしまった」という事実は拭えない。仮に顧問弁護士に確認した上であっても、口にしてはいけない見解である。世間では「法律を守っていれば、なにをやってもかまわないのか」という、ネガディブな企業イメージが作られてしまう。

 

続いて、絶対、吐いてはいけない言い訳。

「みんなやっいる」「他の会社もやっている」。

このひと言は業界を揺るがすので、100%、使ってはいけない。言ってしまうと、会社は倒産または、業界全体で潰しにくる、とN氏は指摘する。恐ろしい限りである。

(余談だが、マンション傾斜問題では先週、業界団体が記者会見を開き、謝罪している)。

 

さらに「たいしたことはない」。

実際にたいしたことではなくても、事の重大さを決めるのは当事者であったり、読者・視聴者であって、問題を起こした会社が判断することではない。やはり謝罪すべきであって、決して表にしてはいけない言い分である。

 

「ご存じのように」「先ほど申し上げたとおり」「言うまでもなく」。

話す気がない、喋る気がない、というのが看取できるので、避けたほうが賢明とのこと。確かに、聞かされた記者はもちろん、読者や視聴者にも響きの悪い、マイナスの印象を与える気がする。

 

最後に、「私たちも被害者です」。

某企業のトップが発して、注目を浴びたコメント。確かに正しいのだが、その被害が消費者に波及してしまっては、よろしくない。不適切な表現である。

 

以上、禁句集。

 

今後のメディア対応の参考になれば幸いである。

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1611, 2015

記者への取材対応、ブリーフィングの巧拙が、記事内容にも影響してくる

「私自身は、取材拒否をされるととても嬉しかった。つまり、何を書いても企業側から怒られない、と信じていたからだ。『お手柔らかに』といった挨拶がくることはあったが、クレームや怒りの電話など、一切の文句はなかった」。

 

こう語るのは、編集長という立場上、めっきり記事を書くことの少なくなったT氏。記者時代は、社会部系の事件も含め、企業のネガティブな話題も数多く取材した。取材拒否を受けることもあった同氏が、広報担当者の取材対応・ブリーフィングの巧拙を語ってくれた。

 

広報担当者に取材を断わられれば、関係者など周辺取材をして記事を書いても、確かに取材拒否をしたわけだから、当の企業は非難・批判は言い難いといったところだ。

 

いっぽう困るのは、広報側から「社長は出せません」「当時者には取材できません」「広報対応はします」といった類の対応が、微妙に難しいとT氏は言う。いざ、広報担当者が取材を受ける段になると「どういったトーンで記事を書くのか」と聞いてくるそうだ。あるいは「発言だけでもみせてほしい」といった打診もあり、記者にとっては悩ましい対応とのこと。

 

では、良くできた広報担当者はどんな対応をするのか。

 

「上手な人は、“レクチャー”と称して、意見交換をして欲しいと提案してくる。社長を取材するにあたり、業界はいまこうなっている、当社はこういう課題を抱えているなど、基本的なことを説明し、取材して欲しいのはこういった点です、と提示してくる。ついつい、話にひきずられてしまい、ペンが鈍る」と、自嘲気味に話す。

 

もうひとつ、記者にとってはとても有り難い取材対応を語ってくれた。

 

バブル崩壊後、ゼネコンの取材に奔走していたころ、ゼネコンのメインバンクを取材したときのことである。取材対応をしたのは広報担当者ではなく、ゼネコン業界に詳しい銀行マンであった。

 

「まず、ゼネコン業界を理解させるために、業界の全体像を解説。もちろん喋っていけないことは当然、口にしないが、ちょっとだけおもしろい情報を提供する。要は、業界関係者が読むと『この記事はそれなりに取材をして書かれている』とわかるヒントをくれる。メディアを喜ばせる手法です」と褒めている。

 

満足感のある取材対応でかつ、興味深い取材原稿が書ける情報を与える、これもまた、広報担当が見習うべき取材対応のひとつである。

 

内容の好悪に関わらず、最低限、広報担当者だけは取材に応じたほういい、とはT氏の助言である。

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2809, 2015

メディアへの交渉はスマートがいい ひとつ間違えると、悪い印象しか残らない

メディアへの取材打診。記者発表会への記者の誘致。トップインタビューの依頼。・・・・・・・・。

 

広報担当者としては、1件でも多くの記事を獲得したい。1社でも多く発表会の出席者を増やしたい。担当者の本音ではないだろうか。

 

では、受け手の記者はどうみているのだろうか。

 

女性記者はこう話す。

 

「取材の打診がきたとはきはまず、会社のネームバリューを意識します。記事にして、どれだけのPVをとれるかが、大きな判断材料になります。有名企業でかつ、良い製品でも、PVがどれそうにもないと思えば、断ります」。とは言いつつも、親しい広報担当からのお願いであれば、受けてしまうこともある、と漏らす。

 

ITメディアの編集長は。

 

「うちの媒体の読者を意識し、こういうメッセージを投げかけたい、といったシナリオがあると、好意的に検討する。当然、競合メディアにも交渉していると思うので、こちらの特徴を理解して、取材を打診してほしい」。

 

同氏は別の例もあげる。

 

「たまたま本国からVIPが来日するので、ぜひインタビューしてほしいと、お願いしてくる場合がある。酷いのは、テーマも説明もなく、闇雲にインタビューしてほしいといった、乱暴なパターンもあった。これは稀なケースですけど」。

 

男性記者はこう語る。

 

「外資系のIT企業だが、1週間に数回の記者説明会があり、頻繁に電話がはいったのには閉口した。気持ちはわかるが、勘弁してほしい。テーマが違うとはいえ、記者の手配もあり、一つの企業の説明会に何度も出席はできない」。

 

さらに、似たようなケースを続ける。

 

「たまたま、同じ月に本国からVIPが立て続けに来日し、毎度のようにインタビューを依頼してきた。併せて記者説明会への出席の催促もあり、うんざりした。印象を悪くするので、こういったことは止めたほうがいい」。

 

別の男性記者は。

 

「記事をきちんと読まずに取材を依頼してくる広報担当者がいる。どんな読者に、どういう情報を発信しているのか、ある程度、理解した上で、コンタクトすべきだ。絶対、避けた方がいいのが、同じ編集部内の複数の記者へアプローチすること。断られたので、他の記者に頼もうというのはわかるが、間違いなくマイナスになる」。

 

交渉は難しい。

 

積極さは好意的にとれるが、強引さはひとつ誤ると暴力的な印象を与えかねない。

 

相手あっての交渉である。

 

スマートなメディリレーションを心がけたい。

 

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1409, 2015

日頃、何げなく気になっていた疑問を、IT記者に聞いてみた

普段、何げなく気になっていたことを、知り合いのIT記者にぶつけてみた。

以下はそのやりとりである。

 

まずはこちら。

 

取材したが、記事化できなかったケースはあるか。

 

「ある。2つのパターンがある。一つは、あまりにも早い段階で取材をしてしまい、その時点でのストーリーと、実際に原稿を書く段になってのストーリーが大きく食い違うもの。取材相手に非はなく、悪いのはすべてこちら側(記者)にある。謝罪するのみです」。

 

もう一つのパターンとは。

 

「すべて理解し、執筆する内容も決まっているにも関わらず、最後の取材先で、細かいことだけを聞かざるを得ず、誌面に反映できてないパターン」。

このケースもやはりミスは、記者にある。同氏も過去に失敗した経験があるという。

 

続いて、寄稿の条件とは。

 

「テーマについて詳しくかつ、文章が書けること。所属する企業の知名度はまったく関係ない」。が、意外と、文を書ける人が少ないらしい。

 

「テーマはよく熟知しているが、文章が上手くないと、本人(書き手)のもっている知識が全然、伝えきれない。ブログはおもしろいが、かしこまった原稿を書くと、つまらなくなるケースもある」。

 

広報担当から打診されるときもあれば、本人が直接、持ち込むこともある。

 

曰く「本人の持ち込みはけっこう、ハズレる」と。

 

次はプレスリリース。

 

「日々のニュースを取り上げないITの専門メディアにもやはり、プレスリリースは配信したほうがいいのか」と、以前、クライアントの広報担当者から相談されたことがある。理由を説明したが、本人はいまひとつしっくりしていなかった。“掲載”の二文字が頭にあり、目の前の結果に執着している様子が見てとれた。

 

同氏に彼女の疑問をぶつけてみた。

 

「メディアにもよるが、ハウツー色の強いメディアは、プレスリリースを記事化することは少ない。でも、送ったほうがいい」。

 

私見と断りながら、こう説明する

 

「私が知りたいのは、プレスリリースを通じて、どの企業が、いつ、何を発表したかである。編集企画を立てる際に思い出すことがある。個人的には、プレスリリースをまめにチェックはしないが、印象に残ったタイトルは記憶している。本当に必要な場合は、メーラーでキーワード検索をする」。

 

さらに続ける。

 

「まったく時事性のない特集記事を書きあげる際には、プレスリリースは参考にしない。いっぽう、マイナンバーのような時事性の高い、いまをフォーカスする場合はプレスリリースが役立つ。取材先や取材内容を検討するのに非常に助かる」。

 

最後にこう言っていた。

 

「広報担当者はできるだけ、メディアと接する機会をもったほうがいいですよ」と。

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709, 2015

所変われば品変わる 業界によって広報対応は随分と違うもの

所変われば品変わる。

 

業界によって、広報の対応は違うようだ。

 

ITを含め、ものづくりや研究開発など、幅広い分野を取材するK記者。以下は、製薬会社および大学の広報と、K記者の間でおきた話である。

 

某製薬会社のメディア向け勉強会に出席。当然、記事にする前提で、説明内容をパソコンのキーボードに打った。後日、記事をオンラインにアップした。記事を読んだ同社の広報から電話が入った。

 

「掲載されると困るので、記事を取り下げて欲しい」。

 

理由を尋ねても、曖昧な返事が続く。

 

「情報を使うのは構わないが、出所元を明かしてほしくない」。

 

理解し難い言葉が電話の向こうから返ってきた。結果、記事は取り下げた。

 

K氏曰く「勉強会という名称だが、実態は記者説明会に近いものだった」と。

 

以降、製薬業界の記者発表会などに出席した際には必ず、記事の掲載の可否を確認しかつ、配布資料の使用についても了解をとるようにしているとのことだ。

 

こちらは、某国立大学の広報とのやりとり。

 

同大学のホームーページに公開されているプレスリリースを元に記事を書きあげた。

 

しばらくして、同大学の広報から「著作権侵害」とのクレームがはいった。

 

プレスリリースでかつ、ホームページに公開されている情報を利用して、なぜ、著作権侵害なのか、とK氏は同然のごとく疑問に思った。

 

先方に理由を問う。

 

わかったような、わからないような説明があった。

 

「プレスリリースは、こちらに著作権があるので、勝手に使用してもらっては困る」。

 

「使用するなら、出所元を明記し、プレスリリースをそのまま載せてほしい」。

 

「当大学は市政記者クラブのみにプレスリリースを配布しており、記者クラブに所属していないメディアには配布していない」。

 

結局、記事は取り下げてしまった。

 

後日、2,3の国立大学に問い合わせたところ、市政記者クラブのみにプレスリリースを配布する慣習の大学があることがわかったそうだ。

 

何のための情報公開であり、何のための広報なのか。

 

腑に落ちない、二つの出来事である。

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3108, 2015

記者の思いをぶつけるのが編集会議 だけど結局、編集長の独断で決まってしまう

「基本的に雑誌は編集長のもの、という考えがある」。

 

こう語るのは、IT担当の記者として10年以上のキャリアをもつS氏。

 

編集長には相当の権限があるのだと窺い知れる言葉だ。

 

瞬間的に、随分と昔、報道番組の記者が漏らした一言が蘇った。

「この報道番組は、キャスターのOOさんのニュースショーですよ」と。

 

絶対的な存在ともいえる編集長。では、編集会議とはいかようなものか、S氏が説明する。

 

「弊誌の場合は、週1回、編集会議を開きます。会議の進め方は媒体(雑誌)の規模にもよりますが、記者の数が多いほど、楽です。“こんな記事を書きたい”“こういった内容の特集を組みたい”など、記者が多ければその分、提案も多くなります。編集会議は、記者が自分の思いを伝える場所です」。

 

思いのたけを吐いた後、どういった判断で記事や特集は採用されるのか。

 

「まず、編集長が、おもしろい、と感じるかです。おもしろいとは、読者に受けるか、という意味です」。

さらにつづく。

 

「最終的には編集長が決定しますが、いろんなタイプがいます。提案内容を重視する。記者の意思を尊重する。あるいは多数決をとる。さらには、個人的な人間関係が左右するケースもあります」。

 

結局は、編集長の独断と偏見で編集内容が決まってしまうようである。

 

雑誌の目玉である特集記事は、どう回っているのか。

「記者の多い編集部では挙手制。少ない編集部は輪番制です」。

 

挙手をしない記者がいるのか気になった。すると、こう返ってきた。

「特集のテーマが出ないというか、挙手をしない記者もいます。本人もまずいと感じています。暗黙のプレッシャーはあります。昔は、出版社によってはパワハラもあったと聞きます」。

 

記者も、記事を書いてなんぼ、である。営業マンが数字をあげなければいけないように、厳しい現実がある。

 

話を戻す。

トップダウンで、編集長から特集テーマが出される場合もある。

 

「飲み会で聞いたとか、○○会社の××取締役が言っていたとか、いまこんなことに興味があるが、といった、ごくごく個人的な理由から決まってしまうこともあります」。

あとは、編集長から指名された記者が、本人の意思に関わらず、担当することになるそうだ。

 

絶対的ともいえる編集長だが、記者によっては、編集長やデスクになるのを嫌がる人もいる。

 

「僕は取材して、記事を書いているほうが好きですよ。人の原稿それも、下手な原稿を読むのはしんどい」。

 

某新聞社のデスクの言葉である。

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