文章は難しい。正しくは、文章を書くのは難しい。

 

プレスリリースを書き上げるのもしかりである。起承転結、5W1H、わかりやすい表現などなど、

お説ご尤もであるが、いざ書きはじめると思い通りにはいかない。あれも言いたい、これも入れたい。

気がつけば、情報のテンコ盛り。迷文のできあがりである。

 

プレスリリースを作るうえで広報担当者が参考にするのは新聞記事だ。新聞記事の構成は“逆ピラミッド”である。結論を先に述べる。リードと呼ばれる前文で全体像を伝え、本文で詳細に触れる。

 

プレスリリースもこの要領で書き上げるといい。

 

しかし、容易くない。

 

タイトルもまた、大切な要素である。インパクトのある表現で読者を引きつけ、一気に読ませないといけない。

 

文を書くのを生業としている記者に読ませるのがプレスリリースである。広報担当者であればやはり、いい文を書きたいという欲がでてもおかしくない。新聞記事がすべてではないが、プレスリリースを書き上げる際の身近な教材の一つである。

 

「どうやったら、いいプレスリリースが書けるようになるか」。

 

「どうすれば、澱みない表現ができるか」。

 

こんな疑問に、何と答えたらいいのか。

 

的を射た言葉が見当たらない。

とどの詰まり、習うより慣れろ。兎に角、“数多く書き抜く”“良書をたくさん読む”といった類の、ありきたりな回答になってしまう。

では何が良書か、と追い打ちをかけられることもある。

薦める一冊がある。

 

いまは亡き朝日新聞の論説委員、深代惇郎氏が記した「天声人語」である。

 

とてもわかりやすい。頭のなかにスッーとイメージが湧いてくる。明快で、リズムがある。内容に普遍性があり、いつの時代に読んでも違和感がない。

 

文章とは,こう書くものなのか、こんなふうに表現できたら最高だろうな、と感じいってしまう。

 

随分と昔に、深代氏が社内でどう評価されているのか、朝日新聞の記者に尋ねたことがある。

 

ひと言、「伝説の記者です」と。

 

文章の素晴らしさ以上に、世の中に警鐘を鳴らし、弱者の傷みを気づかせてくれる、それが深代惇郎氏が遺した「天声人語」のように思えてならない。