「基本的に雑誌は編集長のもの、という考えがある」。
こう語るのは、IT担当の記者として10年以上のキャリアをもつS氏。
編集長には相当の権限があるのだと窺い知れる言葉だ。
瞬間的に、随分と昔、報道番組の記者が漏らした一言が蘇った。
「この報道番組は、キャスターのOOさんのニュースショーですよ」と。
絶対的な存在ともいえる編集長。では、編集会議とはいかようなものか、S氏が説明する。
「弊誌の場合は、週1回、編集会議を開きます。会議の進め方は媒体(雑誌)の規模にもよりますが、記者の数が多いほど、楽です。“こんな記事を書きたい”“こういった内容の特集を組みたい”など、記者が多ければその分、提案も多くなります。編集会議は、記者が自分の思いを伝える場所です」。
思いのたけを吐いた後、どういった判断で記事や特集は採用されるのか。
「まず、編集長が、おもしろい、と感じるかです。おもしろいとは、読者に受けるか、という意味です」。
さらにつづく。
「最終的には編集長が決定しますが、いろんなタイプがいます。提案内容を重視する。記者の意思を尊重する。あるいは多数決をとる。さらには、個人的な人間関係が左右するケースもあります」。
結局は、編集長の独断と偏見で編集内容が決まってしまうようである。
雑誌の目玉である特集記事は、どう回っているのか。
「記者の多い編集部では挙手制。少ない編集部は輪番制です」。
挙手をしない記者がいるのか気になった。すると、こう返ってきた。
「特集のテーマが出ないというか、挙手をしない記者もいます。本人もまずいと感じています。暗黙のプレッシャーはあります。昔は、出版社によってはパワハラもあったと聞きます」。
記者も、記事を書いてなんぼ、である。営業マンが数字をあげなければいけないように、厳しい現実がある。
話を戻す。
トップダウンで、編集長から特集テーマが出される場合もある。
「飲み会で聞いたとか、○○会社の××取締役が言っていたとか、いまこんなことに興味があるが、といった、ごくごく個人的な理由から決まってしまうこともあります」。
あとは、編集長から指名された記者が、本人の意思に関わらず、担当することになるそうだ。
絶対的ともいえる編集長だが、記者によっては、編集長やデスクになるのを嫌がる人もいる。
「僕は取材して、記事を書いているほうが好きですよ。人の原稿それも、下手な原稿を読むのはしんどい」。
某新聞社のデスクの言葉である。