PRと広告のちがいについて
PRと広告、何が異なるのか、と言うお話をよくクライアントの方からいただく。
たしかに両者ともにメディアに掲載される、ということではあるし、厳密なちがいは分かりにくいので、こちらでちがいについて触れておきたい。
まず広告から説明する。
広告はメディアに対して、「広告料」を支払って、媒体の一部を一時的に借りる行為である。
お金を支払っているのだから、基本的に広告の中身はこちらで決めることができるし、構成なども自由である。要は、「こちらの言いたいこと」をメディアに載せるための手段である。
ただし、デメリットもある。あまりにも日常に広告が多すぎるので、ほとんどの広告は無視されてしまう、という点だ。
ウェブ広告などはどの程度の人が興味を持ってもらったかがわかるが、100人に1人でも見てもらえれば万々歳と言っても良い。
従って、広告は単発では意味がなく、打ち続けなければならない。よって、コストが非常にかかる。
PRとは、パブリック・リレーションズの略である。これだと意味が分かりにくいが、要はメディアとの関係を良好、密接に保つことにより、メディアに「記事として」自社のサービスなどを取り上げてもらう活動である。
一般的には掲載に費用がかかるわけではなく、メディアの取材に応じたり、リリースを出すことができれば無料でメディアに掲載される。
もちろん、「記事」として掲載されるのではるかに広告より信用が高く、注目度も高い。
ただし、こちらにもデメリットがないわけではない。記事は基本的にメディアの記者が作成するが、こちらは記事の内容に口を出すことは出来ない。たとえネガティブな情報であってもである。
したがって、必ずしもこちらの言いたいことを代弁してくれるわけではないし、また、よほど名のある会社や、内容として新規性があるなどの特徴がなければ、まず取り上げてもらえない。
ちなみに、「記事広告」という分野があるが、これは記事と広告の中間、と言うよりは、「記事と見せかけた広告」であり、PRとは別物である。むしろ広告の一形態、と言っても良い。
広告も、PRも、メリット共にデメリットも有る。
両輪で自社のマーケティングに役立てる。そういった姿勢で臨むのが良いのだろう。
広報活動の目的は営業 メディアを通じて認知度をあげていく
「広報活動の一番の目的は営業です」。
ITを駆使してマーケティングサービスを提供するベンチャー企業の代表を務めるT氏は、こう語る。
報道機関(以下メディア)に取り上げてもらうことで、問い合わせを増やす。T氏の会社のように認知度の低い企業がビジネスを広げていくには、メディアを通じて世の中に知らしめる必要がある。
「広告で伝えるのと、記事で言うのでは、クオリティーが違う。客観的な記事のほうが問い合わせは多い」と、T氏はメディアの存在意義を強調する。記者が自らの判断で書きあげた記事の信憑性・信頼性は、読者への説得力が広告以上に高い、ということだ。
広報と広告の違いは以前から言われているが、白か黒かといった議論ではなく、あくまでも、目的に応じて使い方が異なるだけである。ただ、口コミ情報がこれだけ拡散する時代になると、広告の説得力が以前より見劣りしてしまうのは致し方ないところであり、広報に力を入れる企業が増えるのも必然だ。
実際、数ヶ月まえ、T氏の会社は新サービスを発表、PR代理店を使って広報活動を行っている。目的はメディアへのオリジナル記事の掲載である。数多くのIT系ネットメディアに取り上げられ、期待以上の効果を得たという。報道された直後から、連日、電話やメールの問い合わせに追われ、相手先に訪問することもあり、大手IT企業との契約もとれた。
なぜ、これほどまでの成果がでたのか。T氏の話をまとめると、主要な施策は以下のとおり。
目的を明確にし、記事獲得をコミットできるPR代理店を選定
一部メディアに、プレスリリースの配信前に、こういった内容の発表をする旨を伝える
プレスリリースの配信後、記者にフォローの電話をいれる
個別のインタビューを入れる
言葉にすると簡単に感じられるが、いざ実行となると難しいものがあるだろう。実際にはキメ細かい付帯作業も行っているであろう。
私見ではあるが、メディアとの堅いリレーションシップがあったり、提供する情報(この場合は新サービス)のニュース性・鮮度が高かったりさらに、記者から掲載の言質がとれたり、といったものがうまく咬み合わないと、上のような結果は簡単にはでないはずだ。
また、広報担当者の力量・素養についてもT氏は触れている。
「広報担当者(PR代理店)にはメディア・記者に対する人間力のようなものが必要ではないか。言い方をかえると、記者とのコミュニケーションには相手に対する心遣いとか、フォローあるいはお礼といった、日本的なやりとりが大切になる。電話とメールだけのコミュニケーションではダメですね」。
メディアリレーションを築く上で、T氏の言っていることは至極、当然のことである。しかし、意外とこの当たり前のことができない。