所変われば品変わる 業界によって広報対応は随分と違うもの

所変われば品変わる。

 

業界によって、広報の対応は違うようだ。

 

ITを含め、ものづくりや研究開発など、幅広い分野を取材するK記者。以下は、製薬会社および大学の広報と、K記者の間でおきた話である。

 

某製薬会社のメディア向け勉強会に出席。当然、記事にする前提で、説明内容をパソコンのキーボードに打った。後日、記事をオンラインにアップした。記事を読んだ同社の広報から電話が入った。

 

「掲載されると困るので、記事を取り下げて欲しい」。

 

理由を尋ねても、曖昧な返事が続く。

 

「情報を使うのは構わないが、出所元を明かしてほしくない」。

 

理解し難い言葉が電話の向こうから返ってきた。結果、記事は取り下げた。

 

K氏曰く「勉強会という名称だが、実態は記者説明会に近いものだった」と。

 

以降、製薬業界の記者発表会などに出席した際には必ず、記事の掲載の可否を確認しかつ、配布資料の使用についても了解をとるようにしているとのことだ。

 

こちらは、某国立大学の広報とのやりとり。

 

同大学のホームーページに公開されているプレスリリースを元に記事を書きあげた。

 

しばらくして、同大学の広報から「著作権侵害」とのクレームがはいった。

 

プレスリリースでかつ、ホームページに公開されている情報を利用して、なぜ、著作権侵害なのか、とK氏は同然のごとく疑問に思った。

 

先方に理由を問う。

 

わかったような、わからないような説明があった。

 

「プレスリリースは、こちらに著作権があるので、勝手に使用してもらっては困る」。

 

「使用するなら、出所元を明記し、プレスリリースをそのまま載せてほしい」。

 

「当大学は市政記者クラブのみにプレスリリースを配布しており、記者クラブに所属していないメディアには配布していない」。

 

結局、記事は取り下げてしまった。

 

後日、2,3の国立大学に問い合わせたところ、市政記者クラブのみにプレスリリースを配布する慣習の大学があることがわかったそうだ。

 

何のための情報公開であり、何のための広報なのか。

 

腑に落ちない、二つの出来事である。

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記者の思いをぶつけるのが編集会議 だけど結局、編集長の独断で決まってしまう

「基本的に雑誌は編集長のもの、という考えがある」。

 

こう語るのは、IT担当の記者として10年以上のキャリアをもつS氏。

 

編集長には相当の権限があるのだと窺い知れる言葉だ。

 

瞬間的に、随分と昔、報道番組の記者が漏らした一言が蘇った。

「この報道番組は、キャスターのOOさんのニュースショーですよ」と。

 

絶対的な存在ともいえる編集長。では、編集会議とはいかようなものか、S氏が説明する。

 

「弊誌の場合は、週1回、編集会議を開きます。会議の進め方は媒体(雑誌)の規模にもよりますが、記者の数が多いほど、楽です。“こんな記事を書きたい”“こういった内容の特集を組みたい”など、記者が多ければその分、提案も多くなります。編集会議は、記者が自分の思いを伝える場所です」。

 

思いのたけを吐いた後、どういった判断で記事や特集は採用されるのか。

 

「まず、編集長が、おもしろい、と感じるかです。おもしろいとは、読者に受けるか、という意味です」。

さらにつづく。

 

「最終的には編集長が決定しますが、いろんなタイプがいます。提案内容を重視する。記者の意思を尊重する。あるいは多数決をとる。さらには、個人的な人間関係が左右するケースもあります」。

 

結局は、編集長の独断と偏見で編集内容が決まってしまうようである。

 

雑誌の目玉である特集記事は、どう回っているのか。

「記者の多い編集部では挙手制。少ない編集部は輪番制です」。

 

挙手をしない記者がいるのか気になった。すると、こう返ってきた。

「特集のテーマが出ないというか、挙手をしない記者もいます。本人もまずいと感じています。暗黙のプレッシャーはあります。昔は、出版社によってはパワハラもあったと聞きます」。

 

記者も、記事を書いてなんぼ、である。営業マンが数字をあげなければいけないように、厳しい現実がある。

 

話を戻す。

トップダウンで、編集長から特集テーマが出される場合もある。

 

「飲み会で聞いたとか、○○会社の××取締役が言っていたとか、いまこんなことに興味があるが、といった、ごくごく個人的な理由から決まってしまうこともあります」。

あとは、編集長から指名された記者が、本人の意思に関わらず、担当することになるそうだ。

 

絶対的ともいえる編集長だが、記者によっては、編集長やデスクになるのを嫌がる人もいる。

 

「僕は取材して、記事を書いているほうが好きですよ。人の原稿それも、下手な原稿を読むのはしんどい」。

 

某新聞社のデスクの言葉である。

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紙媒体とオンラインメディアの差 記者はこう考える

新聞や雑誌といった紙メディアとオンラインメディアの両方を経験した記者によると、大なり小なり両者に違いがあるという。

 

以前、日々のITニュースを扱うオンラインメディアに所属し現在、ITの専門雑誌を担当する記者はこう語る。

 

「同じITの専門メディアであっても、雑誌とオンラインでは読者が違う」。

 

具体的にはどういうことか。

 

「オンラインでありながら、何万件の個人情報が漏れたというセキュリティのニュース、新しいスマートフォンのレビュー記事など、マスをターゲットにした情報を取り上げる傾向にある。この手の情報は、専門雑誌は扱わない。専門誌がターゲットとする読者は専門家だ。新製品情報などはまったく読まれないので、誌面もない」。

 

業界新聞からITのオンラインメディアに移った別の記者はこう指摘する。

 

「紙媒体は定期刊行物なので兎に角、発行しないといけない。要は紙面を埋めるといのが第一条件。オンラインには、埋める、という考えはない。日々の記事が1~2本減っても、そう大きな問題はない。しかし、定期刊行物ではそうはいかない」。

 

他にも違いがある。

 

「新聞は書き捨て、という発想がある。紙ゆえに、忘れられるという認識がある。オンラインは日々、蓄積され残っていく。そのせいか、オンラインの場合、記事1本を書くにも慎重になるし、書き捨てはできない。必然的に時間をかけるようになる」。

 

両者のメリットは?

 

「言い古されてはいるが、オンラインはいつでも、どこでも、好きな時に読める。ただ、タイトルを見ただけでは記事のボリューム(重要性)がわからない。新聞はレイアウトの大きさで、記事の重要性が一目でわかる」。

 

前述の記者に話を戻す。

 

「オンラインメディアは、昼休みにコンビニ弁当を食べながら見たり、夕方、手が空いて、終業するまでの空き時間にチェックしたりと、手軽さがある。逆に専門媒体の読者は、役に立てる、勉強するといったモチベーションで記事(情報)に接する。オンラインが流し読みのメディアだとしたら、(専門)雑誌は情報をストックする、活用するメディアといったところだ」。

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記者がいやがる広報対応 言われてみれば当たり前なこと

人間とは不思議なものでも、いい思い出よりも、嫌な出来事をいつまでも覚えているきらいがある

ようだ。

 

印象の悪い広報対応や広報担当者を、記者は意外と忘れていない。

 

「記者発表会で、有名なメディアの記者に対して『OOさんこちらへどうぞ』といった対応をする広報担当者を目にすることがあるが、正直、いい気はしない。確かにメジャーなメディアで紹介されるのと、マイナーなオンラインメディアで掲載されるのでは、影響力は違うので仕方ないといえばそれまでだが・・」と、IT系オンラインメディアのH記者が自嘲気味に話す。

 

発表内容がつまらないと、掲載にも影響するようだ。

 

「たいした発表でないと、自ずと原稿量は減り、写真の掲載数も少なくなる」と、H記者。

当の広報担当者に悪意はないかもしれないがやはり、差別、区別をうけている、という印象をあたえるのは得策ではない。

 

記者も人の子である。

 

別のケースはこうだ。

 

「企業(広報)からトップインタビューの打診があった。こちらとしてはあまり受ける気はなかったが、広告との関係もあり了承した。了解をするやいなや、電話口で『では質問内容をおくって欲しい』と言ってきた。依頼してきたのはあなただろうと、言葉にこそださなかったが、正直、愕然とした。せめて、こういった内容を考えています。追加の質問があれば教えてください程度の説明があってしかるべきである」。

 

一度は受けたが、その後は二度と応じていないとのことである。

 

もうひとつ、記者発表会関連の対応から。

 

「記者発表会の案内状が送られた後には必ず、広報担当者から、出席確認の電話連絡が入る。電話自体はべつに問題ないが、予定が立たないのに何度も電話をかけてくるのは、仕事に支障もきたし迷惑だ。さらにひどいのは、同じ編集部の複数の記者に電話攻勢をしてくるケースがある。決してプラスにならないし、人間性が疑われるので止めたほうがいい」。

 

企業の広報担当者かPR代理店の担当か定かではないが、若い女性担当で、以前にもプレスリリースのやりとりで、ちょっとしたことがあり、悪い印象が残っていたと、同記者が語っている。

 

IT業界の記者同士はそれなりに交流があり、情報交換なども交わしている。広報担当者も話題にのぼることがある、という。

 

「OO会社の広報担当のXXさんはちょっと強引で・・」といったように。

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認知度をあげるための外資系ITベンダーの地道な広報活動

ネットワーク系のソリューションを提供する外資系ITベンダーの広報活動を紹介する。

 

同社でマーケティングマネージャーを務めるU氏。現在、マーケティングと広報の業務の割合は6対4。今年からPR代理店と契約を交わし、積極的に広報活動に取り組んでいる。

 

「今期は導入事例をどんどん発信して、認知度を上げていく。先行するS社に少しでも近づくには、

当社の実績をアピールするのが最も効果があるとの判断からだ」と説明する。

 

どのような広報をしているのか。

「国内外を問わず、公開できる事例は極力、プレスリリースにして配信している。海外事例は難しいが、日本企業の事例は比較的、メディアが取り上げる確率が高い。1件でも多く事例をとるよう営業にプレッシャーをかけている」。

 

外資系企業の場合、国内のプレスリリースを配信するには本国(本社)の許しが必要となるが、どう対処しているのか。

 

「本国への了解はとっていない。英語への翻訳作業や承認の時間など、無駄が多いので勝手に進めている」と意に介さない。

 

外資系の広報では確かに、何かと本国の許可を必要とするものが多い。プレスリリース1本のために、1ヵ月も時間を要することもある。担当者としてはたまったものではない。

 

事例の他にはどういう策をうっているのか。

 

「メディアリレーションの範囲を広げている。従来はITメディアが中心だったが、教育、医療関係の記者にもコンタクトをしている。理由は簡単で、弊社のソリューションが学校や医療機関に採用されているからだ」。

 

どのようにアプローチしているのか。

 

「PR代理店と連携し、プレスリリースを持参してメディアを訪問し、製品や導入先の説明をしている。技術的な内容は避けて、何ができるか、どんな効果があるかなど、ユーザー目線の話に重きを置いている」。

 

この他、IT系のメディアには、寄稿記事の執筆なども打診しているという。

 

決して派手さはないが、掲載記事の数も着実に増え、認知度の向上を少なからず感じているとのことだ。

オーソドックスで地道な広報活動が功を奏している。

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タイアップ記事が優先 紙面の半分以上はプレスリリースを記事化 業界メディアの厳しい現実の一端

IT、衣料、食品、車・・・・・。

 

どの世界にも、業界に特化した情報を発信するメディアがある。専門紙、業界紙と呼ばれるのがそれで、IT業界向けのメディアのように、オンラインで発信する専門メディアも増えている。新聞、テレビ、一般雑誌とは異なり、対象とする読者は限定されており、発行部数も少なく、記者の数も決して多くはない。書店やキオスクで手にする機会は皆無に近い。

 

IT業界の記者から、企業のマーケティング部に転職したN氏が、自ら関わってきた業界メディアをこう述懐する。

 

「8年ほど在籍していたが、辞める2年くらい前から、先行きが厳しいと感じていた。記事のノルマを処理することが優先され、時間をかけて、じっくり取材をする環境ではなかった。もちろん、大きな特集などは無理だった」。

 

記者も少なく、編集タイアップなどの営業が優先される取材も度々だったという。専門・業界メディア特有の、記事広告が優先されてしまう。

 

「広告がとれないので自ずと、編集とのタイアップ記事で、売上を確保しないといけない。数字(売上)を重視していくと、メディアとしての本来のパワーがどんどん下がってしまう」。

 

業界紙を発行する別の記者は、自社の現状をこう説明する。

「スタッフが足りないので、記者が編集レイアウトも担当する。自ずと取材する時間が制約されるので、50~60%はブレスリリースを記事化して、紙面を埋めている。正直、記事のクオリティーは低くなる」。

 

話をN氏に戻す。

 

転職の際に、他のメディアへの再就職も考えたが、将来への不安がよぎったという。純粋な編集記事にこだわっていたN氏には、企業とのタイアップ記事を手がけるのに、少なからず抵抗もあったようだ。

 

「タイアップ記事は好きではなかったが、同時に、純粋な記事にも関わらず、広告主を意識して書かざるを得ないこともあった。それに記者発表会の内容をだらだらと書くようなこともしたくなかった」。

 

記者が足りなく、締切を優先するため、内容の粗い記事になることも屡だった。

 

だが、否定的なことばかりではない。

「専門メディアとはいえ、一目おかれ、読者や広告主に迎合せず、きちんとした記事を発信するメディアもある。取材に時間をかけ、深く濃い、内容のいい記事を書く記者もいる」と。

 

メディアはどうしても、広告収入に依存せざるを得ない。ましてや業界メディアとなれば、広告収入への依存度は高くなる。否が応でも、収益優先になってしまう。すべての専門メディアが、同氏が指摘するような状況ではないだろうが、淘汰されていくのは防ぎようがないようだ。

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広報から見た、できる記者とそうでない記者の違い

「ひどい記者が結構いる。もっとちゃんと書いてくれ、と言いたくなる」。

 

開口一番、辛辣な言葉を吐くS氏。20年以上にわたりIT業界に身を置き現在、外資系IT企業のマーケティングディレクターの職にある。

 

「能力のない記者は、ステレオタイプの記事が多い。読んでいて“なるほど”と感じるものがなく、文章に輝きがない」と、ストレートである。

 

いっぽう、良い記事とは。

「さすが、と思わせる記事は、こちら(読者)に気づきを与えてくれる」。

 

能力のある記者とそうでない記者の違いは何か。S氏は持論を展開する。

 

「優秀な記者は常に勉強している。年齢や性別といったものはまったく関係ない。もっと言わせてもらえば、物事の本質を捉えようとしている。それはインタビューを受けている際に気づくことがある」。

 

記者に限らず、成長する上で、人間にとって学びは大切な営みである。報道する立場にいる記者であればなおのことである。

 

持論が続く。

「独断と偏見だが、恐らく、取材の段階から違うのではないか。できる記者は、取材前に自分の中でいくつかのストーリーを描いている。インタビューをしながら、自らの仮説を検証している節がある。思い描いたシナリオにはまると、納得したような表情を見せる。取材に同席していて、そう感じさせる記者が確かにいる」。

 

さらに

「優れた記者はポイントになる点を必ずメモしている。どうかな、と疑問符のつく記者は、書きもしなければ、こちらの目も見ていない」と差を指摘する。

 

パソコンを手元に置きインタビューする記者の光景は当然のようになったが、その点も気になるS氏。

「インタビューとはいえコミュニケーションなので、相手の目を見て話すべきです。人と話をする上での原理原則です」。

 

10数年前と比べ、記者の質が落ちたわけではないと前置きしつつ

「以前は、ハードやソフトも簡単で、わかりやすかった。いまはソリューションやサービスに流れ、複雑かつ多様化しているので、全体を把握しないと記者も理解できない難しさがある。記者が俯瞰してみているかどうかは、インタビューをはじめて10分程度でわかる」と、語る。

 

最後に、記者へひと言、と言うと、自省も含めてとしながら、こう返ってきた。

 

「勉強しましょう」。

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結果をだして、社内での広報の評価を高めていく

広報(PR)の世界に飛び込んで、かれかこれ30年がたつ。当時、広報活動を積極的に進めていたのは大手や外資系の企業で、中堅・中小企業では広告が優先されていたように思える。社内でも世の中でも、広報という仕事はまだまだ市民権をえていない、と個人的には感じていた。

 

そして現在、状況は大きく変わったのか。

 

中小のITベンダーでマーケティングと広報の仕事に従事するIさんはこう漏らす。

「社員の多くは広報の仕事がわかっていないし、関心もないようです」。

 

大学卒業後、新卒で同社に入社し、今年3年目迎えた20代半ばの男性である。

「広報に頼ってくる社員がいない。どういうことかいうと、事業部から、広報になりそうな情報が一切、あがってこない。こちらからドアを叩いても、第一声は『ない』の一言。諦めずに粘り強く問いかけると、どうにか、可能性のある情報がでてくる。そういった次元です」と、Iさん。

 

これまでも、何度か記事が掲載されているものの、社員の反応は、芳しくないようだ。自ら開発した製品や企画したサービスがメディアで紹介されれば、少なからず、嬉しいものなのだが。

 

エンジニアにしても営業にしても、広報への評価が低い。以前、営業担当者に掲載記事みせたところ、「この程度の記事では、あまり話題にならないな」と、感謝の一言もなった。

 

Iさんは、現場の声をどう感じているのか。

 

「正直、しんどいですが、結果をだすしかないと思ってます。役員も掲載を見て満足はしていますが、いい意味での叱咤激励がないんです。役員クラスも広報への関心が薄いかなと。ちょっと残念ですけど」と、声が沈んでいる。

 

これから、どう取り組んでいくのか。解決策はあるのか。

 

「兎に角、結果がすべてです。ますば、記事の掲載を1件でも多く獲得する必要があります。これまで、製品やサービスばかりに焦点を当てていましたが、今後は、“人”つまり社員にもフォーカスしようと考えています。自分自身にスポットが当たれば、直接、インタビューをうけるので、広報というものを、多少なりとも意識する機会になるはずですから」。

 

すでに目ぼしい社員がおり、時期を見て、メディアに売り込むそうだ。

「それと、広報はトップと近いので、なんとなく、社員から疎まれる点はあるかもしれないが、常に社員と同じ目線をもつように心がけています」。

 

今後は、会社のブランディングにも着手し、知名度を上げていきたいと、前向きなIさん。

 

広報が社内で評価される日を期待したい。

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取材する側から取材される側へ 広報マンに転職した元記者のはなし

1年前、業界メディアの記者から企業の広報へ転職したH氏がこう語る。

「メディアにいた頃は、プレススリリースをはじめ、企業の情報発信はあまり上手くないと感じていた。

もっとやりようがあると思っていた」。

現在は広報のみならず、社内外に向けたコミュニケーションを推進する仕事に携わっている。

 

取材する側からされる側に立場が逆転した同氏の目には、メディアがどう映っているのか。

 

「記者時代はメディアを過小評価していた。自分の書いた記事が、果たして対象とする読者に読まれているのか正直、わからなかった。メディアなどなくても、情報はいくらでも取れるとも思っていたが、間違っていた」と漏らす。

 

「メディアの価値がよくわかった。仮に月間60~70万のPVを取るオンラインのニュースメディアがあるとする。企業がオウンドメディアを立ち上げ、同じようなPVの数を取ろうとしたら相当な時間がかかる。60~70万のPVを集めるだけでも、メディアとしの存在意義はある」。

 

情報の発信を考えるとやはり、報道機関としてのメディアで取り上げてもらうのが、一番効果があると気づいたという。

 

広報の仕事はどうか。

 

「人選、日程、コメントなど、取材を依頼されたときの社内調整が煩雑だ」。

さらに「記者はひたすら質問をすればいい。こちらは取材は歓迎するが、言いたくないことは言わない。いっぽう、興味深い内容も提供しないといけない。完全に記者と利害が一致しないため、その差分をどう埋めるかが結構、難しい」。

 

記者の経験は活かされているか。

 

「当然、プレスリリースをはじめ、情報発信については役に立っている。情報を収集し、文章化するにしても、インタビューや原稿執筆の経験は非常に活きている。プレスリリースは該当する部門で書き上げるが、広報で文章を校正する。あまり修正しすぎると、担当者が自信をなくすので、やりすぎないように加減している」と、配慮も忘れてない。

 

メディアリレーションはスムーズにできているのだろうか。

 

「知り合いの記者が多いので、コンタクトはやりやすい。彼らも、こちらが無理な売り込みはしてこない、と思っているので、すんなりと会ってもらえる。逆に、ネタの弱いプレスリリースを配信したときなどは、プッシュされるのを記者が嫌がるので、あえてフォローの電話はいれない」。

 

1年が過ぎたが、まだまだやるべきことが山積しているという。

 

「専門メディア以外のリレーション、オウンドメディアの立ち上げ、社内広報の着手、自社の認知度のさらなる向上などなど、課題が多い」と言うその顔は、言葉とは裏腹に、充実感が垣間見える表情であった。

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メディアリレーションは営業活動

「多いときは週に2~3回は記者と飲んでましたね」。

 

こう話すのは、2年間、親会社の広報部に籍を置き、昨年、出向から戻ってきたO氏。現在は、グループ会社で広報マネージャーの任にある。まさに“飲ミニュケーション”によるメディアリレーションといったところである。

最近は少ないが、記者と酒を飲むのが広報の仕事として暗に認められていた時代もあった。

 

「記者と良好な関係をつくろうと思えば、大企業の広報担当者は、大なり小なり、日常的に記者との酒席の機会をつくっている。決して悪いことだとは思っていない。個人的に親しくなった記者も何人かいますね」と、あっけらかんとしている。

 

酒を交わす目的の一番は記者と親しくなるためだ。具体的に仕事の話しをすることはなかったという。確かに、酒の席で仕事の話しばかりすると、マイナスの印象を与えかねない。

 

酒席の必要性は、当時の広報部長のことばからも窺い知れる。O氏にこう話したそうだ。

「対外的な広報活動は、営業活動と同じだ」。

 

つまり、メディアリレーションは営業行為ということだ。本人はどう受け止めたのか。

 

「出向に行く前はグループ会社で営業を担当していた。プレスリリースの配信だけが広報の仕事ではない。毎日、足繁く通うわけではないが、メディアに自社のサービスや製品を売り込むのは確かに、営業活動ですね」。

 

接触するメディアはどういったところだったのか。

「新聞、テレビそれとビジネス系メディアなど、経済記者が中心でした」。

 

2年間、密にメディアリレーションを築いてきたO氏には、いまの会社の広報活動が稚拙に感じられるようだ。

「記者の携帯電話に連絡して、この件は書けますかね、程度のことが言える関係をつくらないと、広報パーソンとは言えない」と手厳しい。

 

現在は、以前のように記者と酒を酌み交わすことが、めっきり少なくなったという。

その顔はどこか、物足りないようにも映った。

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