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メディアへの交渉はスマートがいい ひとつ間違えると、悪い印象しか残らない
メディアへの取材打診。記者発表会への記者の誘致。トップインタビューの依頼。・・・・・・・・。
広報担当者としては、1件でも多くの記事を獲得したい。1社でも多く発表会の出席者を増やしたい。担当者の本音ではないだろうか。
では、受け手の記者はどうみているのだろうか。
女性記者はこう話す。
「取材の打診がきたとはきはまず、会社のネームバリューを意識します。記事にして、どれだけのPVをとれるかが、大きな判断材料になります。有名企業でかつ、良い製品でも、PVがどれそうにもないと思えば、断ります」。とは言いつつも、親しい広報担当からのお願いであれば、受けてしまうこともある、と漏らす。
ITメディアの編集長は。
「うちの媒体の読者を意識し、こういうメッセージを投げかけたい、といったシナリオがあると、好意的に検討する。当然、競合メディアにも交渉していると思うので、こちらの特徴を理解して、取材を打診してほしい」。
同氏は別の例もあげる。
「たまたま本国からVIPが来日するので、ぜひインタビューしてほしいと、お願いしてくる場合がある。酷いのは、テーマも説明もなく、闇雲にインタビューしてほしいといった、乱暴なパターンもあった。これは稀なケースですけど」。
男性記者はこう語る。
「外資系のIT企業だが、1週間に数回の記者説明会があり、頻繁に電話がはいったのには閉口した。気持ちはわかるが、勘弁してほしい。テーマが違うとはいえ、記者の手配もあり、一つの企業の説明会に何度も出席はできない」。
さらに、似たようなケースを続ける。
「たまたま、同じ月に本国からVIPが立て続けに来日し、毎度のようにインタビューを依頼してきた。併せて記者説明会への出席の催促もあり、うんざりした。印象を悪くするので、こういったことは止めたほうがいい」。
別の男性記者は。
「記事をきちんと読まずに取材を依頼してくる広報担当者がいる。どんな読者に、どういう情報を発信しているのか、ある程度、理解した上で、コンタクトすべきだ。絶対、避けた方がいいのが、同じ編集部内の複数の記者へアプローチすること。断られたので、他の記者に頼もうというのはわかるが、間違いなくマイナスになる」。
交渉は難しい。
積極さは好意的にとれるが、強引さはひとつ誤ると暴力的な印象を与えかねない。
相手あっての交渉である。
スマートなメディリレーションを心がけたい。
日頃、何げなく気になっていた疑問を、IT記者に聞いてみた
普段、何げなく気になっていたことを、知り合いのIT記者にぶつけてみた。
以下はそのやりとりである。
まずはこちら。
取材したが、記事化できなかったケースはあるか。
「ある。2つのパターンがある。一つは、あまりにも早い段階で取材をしてしまい、その時点でのストーリーと、実際に原稿を書く段になってのストーリーが大きく食い違うもの。取材相手に非はなく、悪いのはすべてこちら側(記者)にある。謝罪するのみです」。
もう一つのパターンとは。
「すべて理解し、執筆する内容も決まっているにも関わらず、最後の取材先で、細かいことだけを聞かざるを得ず、誌面に反映できてないパターン」。
このケースもやはりミスは、記者にある。同氏も過去に失敗した経験があるという。
続いて、寄稿の条件とは。
「テーマについて詳しくかつ、文章が書けること。所属する企業の知名度はまったく関係ない」。が、意外と、文を書ける人が少ないらしい。
「テーマはよく熟知しているが、文章が上手くないと、本人(書き手)のもっている知識が全然、伝えきれない。ブログはおもしろいが、かしこまった原稿を書くと、つまらなくなるケースもある」。
広報担当から打診されるときもあれば、本人が直接、持ち込むこともある。
曰く「本人の持ち込みはけっこう、ハズレる」と。
次はプレスリリース。
「日々のニュースを取り上げないITの専門メディアにもやはり、プレスリリースは配信したほうがいいのか」と、以前、クライアントの広報担当者から相談されたことがある。理由を説明したが、本人はいまひとつしっくりしていなかった。“掲載”の二文字が頭にあり、目の前の結果に執着している様子が見てとれた。
同氏に彼女の疑問をぶつけてみた。
「メディアにもよるが、ハウツー色の強いメディアは、プレスリリースを記事化することは少ない。でも、送ったほうがいい」。
私見と断りながら、こう説明する
「私が知りたいのは、プレスリリースを通じて、どの企業が、いつ、何を発表したかである。編集企画を立てる際に思い出すことがある。個人的には、プレスリリースをまめにチェックはしないが、印象に残ったタイトルは記憶している。本当に必要な場合は、メーラーでキーワード検索をする」。
さらに続ける。
「まったく時事性のない特集記事を書きあげる際には、プレスリリースは参考にしない。いっぽう、マイナンバーのような時事性の高い、いまをフォーカスする場合はプレスリリースが役立つ。取材先や取材内容を検討するのに非常に助かる」。
最後にこう言っていた。
「広報担当者はできるだけ、メディアと接する機会をもったほうがいいですよ」と。
所変われば品変わる 業界によって広報対応は随分と違うもの
所変われば品変わる。
業界によって、広報の対応は違うようだ。
ITを含め、ものづくりや研究開発など、幅広い分野を取材するK記者。以下は、製薬会社および大学の広報と、K記者の間でおきた話である。
某製薬会社のメディア向け勉強会に出席。当然、記事にする前提で、説明内容をパソコンのキーボードに打った。後日、記事をオンラインにアップした。記事を読んだ同社の広報から電話が入った。
「掲載されると困るので、記事を取り下げて欲しい」。
理由を尋ねても、曖昧な返事が続く。
「情報を使うのは構わないが、出所元を明かしてほしくない」。
理解し難い言葉が電話の向こうから返ってきた。結果、記事は取り下げた。
K氏曰く「勉強会という名称だが、実態は記者説明会に近いものだった」と。
以降、製薬業界の記者発表会などに出席した際には必ず、記事の掲載の可否を確認しかつ、配布資料の使用についても了解をとるようにしているとのことだ。
こちらは、某国立大学の広報とのやりとり。
同大学のホームーページに公開されているプレスリリースを元に記事を書きあげた。
しばらくして、同大学の広報から「著作権侵害」とのクレームがはいった。
プレスリリースでかつ、ホームページに公開されている情報を利用して、なぜ、著作権侵害なのか、とK氏は同然のごとく疑問に思った。
先方に理由を問う。
わかったような、わからないような説明があった。
「プレスリリースは、こちらに著作権があるので、勝手に使用してもらっては困る」。
「使用するなら、出所元を明記し、プレスリリースをそのまま載せてほしい」。
「当大学は市政記者クラブのみにプレスリリースを配布しており、記者クラブに所属していないメディアには配布していない」。
結局、記事は取り下げてしまった。
後日、2,3の国立大学に問い合わせたところ、市政記者クラブのみにプレスリリースを配布する慣習の大学があることがわかったそうだ。
何のための情報公開であり、何のための広報なのか。
腑に落ちない、二つの出来事である。
記者の思いをぶつけるのが編集会議 だけど結局、編集長の独断で決まってしまう
「基本的に雑誌は編集長のもの、という考えがある」。
こう語るのは、IT担当の記者として10年以上のキャリアをもつS氏。
編集長には相当の権限があるのだと窺い知れる言葉だ。
瞬間的に、随分と昔、報道番組の記者が漏らした一言が蘇った。
「この報道番組は、キャスターのOOさんのニュースショーですよ」と。
絶対的な存在ともいえる編集長。では、編集会議とはいかようなものか、S氏が説明する。
「弊誌の場合は、週1回、編集会議を開きます。会議の進め方は媒体(雑誌)の規模にもよりますが、記者の数が多いほど、楽です。“こんな記事を書きたい”“こういった内容の特集を組みたい”など、記者が多ければその分、提案も多くなります。編集会議は、記者が自分の思いを伝える場所です」。
思いのたけを吐いた後、どういった判断で記事や特集は採用されるのか。
「まず、編集長が、おもしろい、と感じるかです。おもしろいとは、読者に受けるか、という意味です」。
さらにつづく。
「最終的には編集長が決定しますが、いろんなタイプがいます。提案内容を重視する。記者の意思を尊重する。あるいは多数決をとる。さらには、個人的な人間関係が左右するケースもあります」。
結局は、編集長の独断と偏見で編集内容が決まってしまうようである。
雑誌の目玉である特集記事は、どう回っているのか。
「記者の多い編集部では挙手制。少ない編集部は輪番制です」。
挙手をしない記者がいるのか気になった。すると、こう返ってきた。
「特集のテーマが出ないというか、挙手をしない記者もいます。本人もまずいと感じています。暗黙のプレッシャーはあります。昔は、出版社によってはパワハラもあったと聞きます」。
記者も、記事を書いてなんぼ、である。営業マンが数字をあげなければいけないように、厳しい現実がある。
話を戻す。
トップダウンで、編集長から特集テーマが出される場合もある。
「飲み会で聞いたとか、○○会社の××取締役が言っていたとか、いまこんなことに興味があるが、といった、ごくごく個人的な理由から決まってしまうこともあります」。
あとは、編集長から指名された記者が、本人の意思に関わらず、担当することになるそうだ。
絶対的ともいえる編集長だが、記者によっては、編集長やデスクになるのを嫌がる人もいる。
「僕は取材して、記事を書いているほうが好きですよ。人の原稿それも、下手な原稿を読むのはしんどい」。
某新聞社のデスクの言葉である。