「昔は各社とも製品やソリューションが少なく、世の中に訴えるメッセージも非常にシンプルでわかりやすかった。いまは製品やサービスも増え、十分に消化しきれないまま、メディアに情報を投げかけている印象がある」。

20年以上にわたってIT業界を取材し続けているIT系メディアの編集長・K氏はこう語る。

 

では、企業が発信するプレスリリース、K氏にはどう映っているのか。

「プレスリリースを隅から隅まで読んでも何を言いたいのかわからない。この手のプレスリリースが外資系のIT企業で比較的、目にすることが多い。結局、本国の英文リリースに当ってみると理解できる、ということがある。日本法人の役割はなんなのか、と思いますね」と、手厳しい。

外資系の場合、本国できちんとリリースが作られ、日本サイドは翻訳するのみで、ほとんど手を加えることはない。翻訳者の力量にもよるが、確かにわかりにくいものが多い。

 

「読んでいて疲れるのは、単に‘あれもできる’‘これもできる’‘これに対応した’など、やたら機能を羅列したものです。確かに事実を書いているが、製品・サービスをだす理由、どんな問題を解決してくれるか、といった本質的な点がスッポリぬけている」。この種のプレスリリースが取り上げられる可能性は低い、とK氏は指摘する。

 

さらに「エンドースをずらずら並べたものがあるが、プレスリリースの本質からしたら必要ない。メディアにとって意味はない」と、にべも無い。ある新聞記者は「コメントが必要であれば、電話取材で直接、聞き取ります。エンドースなんてまったく必要ないですね」と、批判的である。

 

メディアには1日に数百本というプレスリリースが送られてくる。限られた時間内で目を通すわけで、自ずとすべてのリリースは見ない。いかに、記者に興味をもたせるか。そこが広報担当者の腕の見せ所である。どうしたら、プレスリリースを読むのか。

「プレスリリースをざっと見るときに、発信元、会社名を確認して、広報担当者の顔が思い浮かぶと、読みますね」とは、K氏の弁。日々のメディアリレーションの重要性に気づかされる言葉である。

 

プレスリリースを書くとき、配信するとき、広報担当者は記者の顔を思い浮かべることがあるだろうか。